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「CGRP製剤のデメリットと、どのCGRP製剤を選ぶ?」

Dr.丹羽の頭痛コラム

「CGRP製剤のデメリットと、どのCGRP製剤を選ぶ?」
デメリットはやはりコストでしょう!
エムガルティ®は3割負担の方で120mgが13,500円円、初回のみ240mgのため27,020円、アイモビーグ®とアジョビ®は初回から12,470円(12週に1回のアジョビ®を選択すると37,280円)と結構ビックリするお値段になります。一見、エムガルティの方が高額に見えますが、ちょっとしたトリックが存在します。エムガルティ®は1ヵ月に1回の接種ですが、アイモビーグ®とアジョビ®は4週単位で計算をします。接種を継続した場合、厳密に支払額を計算するとエムガルティ®は1年間に12回の接種(162,000円)ですが、アイモビーグ®とアジョビ®は1年間に13回の接種(162,110円)となるので、どの薬剤が高いとか、安いとかはないのです。
また、3剤とも冷蔵庫から室温に戻すため30分の時間を要するので待ち時間が多くなります。
以前にご説明したかもしれませんが、適応患者や医師の条件もあることです。適応患者は①MHDが4日以上、②急性期治療を適切に使用しても日常生活に支障もしくは片頭痛発作抑制薬(トリプタンやエルゴタミン製剤)の効果が不十分か、継続できないか、副作用ため使用できない時、とあります。
医師の条件は初期研修2年後に5年以上の頭痛診療経験、かつ、日本神経学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本脳神経外科学会専門医のいずれかを有する医師に限定されています。
副作用として、エムガルティ®は注射部位の注射後の痛み、腫れ、しこり、痒みが圧倒的に多く(10~15%)、その他には目立った副作用がありませんでした。アイモビーグ®は注射部位の注射後の痛み、腫れ、しこり、痒みは1.5~3.7%程度と非常に少なく、咽頭炎や上気道炎が6.7~14.2%に認められています。アジョビ®は4週間に1回でも12週間に1回でも副作用はほどんど変わらず、注射部位の注射後の痛み、腫れ、しこり、痒みは4~37%認められていますが、その他には目立った副作用がありませんでした。
現在、臨床治験中の薬剤も含めると合計4種類のCGRPを作用させなくする予防薬があります。この中でルンドベック社のEptinezumabのみ30分以上かけての点滴で、他の3種類は1回/月もしくは1回/3か月の皮下注射となります。
エムガルティ®には120mgオートインジェクターと120mgシリンジがあり、月に1回だけ皮下注射(3剤とも腹部か大腿部、上腕部に皮下注射可能で、エムガルティ®だけ臀部にも皮下注射が認可されています)すれば良いという点でしょう。初回だけ240mgのため、2本打つ必要がありますが・・・。2022/4以降はオートインジェクターによる自己注射が承認される可能性がありますが、現状では3剤とも自己注射は認可されていません。エムガルティ®とアイモビーグ®は1本1cc(アジョビ®のみ1本1.5cc)ですので、皮下注射される量としてはインフルエンザ予防接種の倍位(アジョビ®は3倍)の量です。アイモビーグ®は4週に1回の皮下注射ですが、アジョビ®は12週に1回の皮下注射(4.5ccの皮下注射となり、3本連続で違う部位に皮下注射する必要があります)とすることも可能です。エムガルティ®のようなローディングドーズとしての初回2倍量接種が必要ないのはアイモビーグ®とアジョビ®の利点といえます。ちなみに著者の友人である十数名の米国脳神経内科医は全員、アジョビ®も4週に1回の皮下注射を選択しており、また、2019年に米国脳神経内科医に対する調査では大多数の片頭痛患者が毎月の注射を希望していました。友人曰く(頭痛専門医ならば誰でも考えます)ですが、その理由は、気圧変動や湿気・高温が多大に影響する6~9月と、気圧が一定化し空気が乾燥する11~2月では絶対と言って良いほど、片頭痛発作回数は変わるので、医師も患者も4週に1回を選択する訳です。
しかし、我が日本人は勤勉かつ多忙な人種であり、診察時間も十分に作ることさえ難しい人が沢山いらっしゃいます。それなりの季節による片頭痛発作の増減はあったとしても、トリプタン製剤が奏効するのであれば、冬の時期に貯蓄していた、つまり服用しない日が多かったことによるトリプタン製剤(10回分/1ヵ月しか処方できませんので・・・。ここでトリプタ製剤を10錠/一回の診察ならば、発作の多い月にだけ3回受診して貰えば30回分の処方になるから良いのでは?、なんて考えているDr.は・・・いませんね)の残りを上手く服用し、4回/年だけの医療機関受診すれば良いとなると、上記のアメリカと我が国では異なってきます。
ルンドベック社のEptinezumabは他のCGRPを標的とする薬剤とは一線を画している可能性があります。効果が速やかに現れ、多くの患者で1ヵ月あたりの片頭痛の日数が75%以上減少すことから、このクラスでは最も有効性の高い薬剤と位置付けられるかもしれません。
以上より、全て私見になりますが、CGRP製剤の使い方としては、段階を経るのであれば、まずは抗CGRP受容体抗体であるアイモビーク®︎を使用して、十分な効果が得られない方はエムガルティ®︎かアジョビ®︎、それでも効果が不十分な方はEptinezumabという選択肢になるのではないでしょうか?
もし、最初から奏効性重視であれば、エムガルティ®︎、Eptinezumabの順になるのでしょうか?
あくまでも私見ですが・・・。