「COVID-19と脳神経ダメージ」
この連休に東京都民だけ対象外の「go to」、連休初日の7/23東京都発生数366名、そして連休と言いながらも僕らの仕事は土曜日も夜までフルワークのため単なる2連休で、どこにも行くこともなく、最近の新型コロナが脳神経系に及ぼす影響を少しお勉強してみました。以前は図書館で調べないと英文論文も読めませんでしたが、現在ではPubMedでほとんどが無料で読めてしまうので情報入手も楽になりました。さて、前置きはこの位にして・・・、以下が2020/7の新型コロナと脳神経系関係の最新情報です。
①インフルエンザで頭痛は良く経験することです。イタリアからの報告では、インフルエンザ＆呼吸器症状があった入院患者の半数にPCRで新型コロナが陽性であった患者さんが半数もおり、症状を比べてみると、PCR陽性患者vs陰性患者では頭痛(4.6%vs0.4%)、低酸素脳症(35.2%vs21.1%)、嗅覚障害(6.1%vs0.9%)、脳梗塞(0.9%vs7.3%)、筋力低下・筋肉痛・筋肉酵素であるCK高値(32.3%vs7.3%)だったそうです。
COVID-19は他のインフルエンザ疾患と比べて、頭痛、嗅覚障害、筋肉ダメージがとても高頻度でしたが脳梗塞にはなり難い傾向でした。(Eur J Neurol. July 18, 2020)
② COVID-19では遅発性、長期間潜伏性の神経障害に注意が必要で、感染直後に無症状であっても長期的に大丈夫かは分からないということになります。例えば、有名な嗅覚障害851名では完全に回復したのは367名(49％)のみで、部分的な回復は107名(14％)、何と277名(37％)は改善がなかったと報告しています。嗅覚障害の持続期間は、完全に回復した患者では10±6日(3～31日)、部分的に回復した患者でも12±8日(7～35日)と時間を要していました(Eur J Neurol. July 16 2020)。
③ 無症状のCOVID-19感染者はウイルス抗体価が低く、回復早期に陰性化してしまうことが報告されており、つまりは軽症患者では免疫が長くは持続されず、集団免疫の実現性やワクチンの効果の持続性について注意を喚起するものでした(NEJM. July 21, 2020)。
④ フランスでのCOVID-19陽性患者における頭部MRI所見と神経症候を調べてみると、頭部MRIでは脳梗塞(27％)、脳炎(13％)が多かったようです。神経症候として最も多かったのは錯乱(53％)で、次いで意識障害(39％)、興奮(31％)、頭痛(16％)でした。脳梗塞を認めた患者さんでは呼吸症状は軽く、脳炎は若者に多かったとの事でした(Neurology. July 17, 2020)。
⑤ AstraZeneca社とオックスフォード大学のCOVID-19ワクチン(AZD1222: ChAdOx1 nCoV-19)の治験では、中和抗体(つまりはCOVID-19に対抗できる)がほぼ全員(単回投与後で91%、2回投与後では100%)に認められました。また全例でT細胞反応が認められ(つまりは免疫力がついたということ)、スパイク蛋白質特異的エフェクターT細胞反応は14日時点でピークとなり、2か月後の測定でも維持されていました。副作用は注射部の痛み、頭痛、疲労、寒気、発熱、倦怠、筋痛が認められましたが(いずれもp＜0.05→無視できる程度と頻度ということ)、また、パラセタモール(アセトアミノフェン、つまりはカロナールみたいなもの)の予防的使用で軽減しました。重篤な有害事象はなく、許容できる安全性プロファイルを示し、現在は大規模な治験が英国、ブラジル、南アフリカで進行中です(日本は入っていません・・・)(Lancet. July 20, 2020)。
⑥ 中国CanSino社のベクター COVID-19ワクチンでは、高用量ワクチン群および低用量ワクチン群の28日目の抗体陽転率はそれぞれ96％および97％であり、いずれの群も有意な中和抗体反応(つまりは抵抗力がついているということ)が誘導されました。副作用に関しては、重度有害事象が高用量群では9%、低用量群では1%であり、低用量投与で安全性は良好で、かつ、抗体やT細胞反応は同等と考えられ、次の段階の治験は低用量投与の効果を調べるべきと結論づけられていました(Lancet. July 20, 2020)。
結構、COVID-19では頭痛が多く、特徴に触れている論文はありませんでしたが、片頭痛的な激痛が多い様に思えました。また、MRIも風邪っぽい症状の後には検査されておいた方が良いかもしれません。無症状でも脳内に何らかの変化があるかもしれません。
with Coronaは現状ではなくなりそうもありませんが、人間は今までもvirusとの戦いに勝利してきました。
皆さん、COVID-19に負けず、マスク頭痛にも負けず、熱中症にも注意して、この夏を乗り越えましょう！