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もやもや病

Dr.丹羽の頭痛コラム

明けましておめでとうございます。
オミクロン株が猛威を奮っております2022年初頭ですが、頭痛持ちの方にとって良い年になりますよう祈念し、小職も頑張る所存でございます。どうぞ、宜しくお願い申し上げます。ちなみに承認されました新型コロナの経口治療薬メルク社の「ラゲブリオ(モルヌピラビル)」は発症5日以内に飲むと、重症化リスクがある外来患者の入院または死亡を約50%減らすものですが、副作用としても1.0%の可能性で頭痛を起こします。と申しましても、実際には、現状はほとんどの方が服用できない(ほとんど入手できません)ことの方が頭痛の種かもしれません。近いうちに、発症3日以内に飲むと重症化リスクがある外来患者の入院または死亡を89%減らすファイザー社の「パクスロビド」も認可されると思います。
今年のコラム数回は頭痛を起こし得る稀な脳神経疾患について説明をします。
まずは「もやもや病」です。
もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症とも言います)は、アジア人、特に日本人に良くみられる原因不明の多発する進行性脳血管閉塞症、つまりは脳内の色々な部位で血管が詰まっしまう疾患です。
カテーテルによる脳血管撮影検査を行うと両側の内頚動脈終末部に狭窄もしくは閉塞を認め、それに伴いその周囲に異常血管網を認めます。
この血管網がタバコの煙のようにモヤモヤしているので、もやもや病と呼ばれますが、俗称ではなく世界的に認められているきちんとした疾患名なのです。
家族性の発症を10~20%に認める、つまり遺伝性疾患なのですが、残念ながらはっきりとした原因はわかっていません。男女比は1:2.5で有病率は10万人に対して3~10.5人とされています。発症年齢には学童期と20歳以降の成人と2つのピークがあります。
5~10歳では、お誕生日ケーキのロウソクを消そうとしたときや大声で泣いたとき、リコーダーなどの吹奏楽器を演奏したときなど、大きな呼吸を短い時間に繰り返すときに起こる過呼吸によって、症状が現れることが典型的です。一過性の脳虚血発作(脳の一部の血液の流れが一時的に悪くなることで、半身の麻痺などの症状が現れ、24時間以内に完全に戻る)が起こり、手足の脱力や言語障害などの症状が出ます。朝方に頻繁に頭痛を訴えることがあります。ちなみに「もやもや病+片頭痛」の方はトリプタン系薬剤は使用してはいけません。トリプタン系薬剤は血管収縮を起こしますので、脆いもやもや血管が詰まってしまうと簡単に脳梗塞を起こしてしまうからです。通常の鎮痛薬が効かない場合は予防薬にて片頭痛をコントロールするしかありません。
30~40歳の場合は、小児と同じように一過性の脳虚血発作を起こすこともありますが、くも膜下出血や脳出血を起こすことが多いのです。
もやもや病による血管の狭窄や閉塞は内科的に防ぐことができません。ですので、「新しい血管を作る手術」しか治療法はないのです。
脳表面の血管と頭の皮膚血管を直接つなぐ「直接バイパス術」と、頭の筋肉や膜を脳に貼り付けて新しく血管が生じるのを期待する「間接バイパス術」の2つがありますが、実際の手術ではこれらを組み合わせる場合も多々あります。歌手の徳永英明さんも2016年2月にもやもや病と診断され、これらを組み合わせた手術を受けているようです。