アイモビーグ®︎とアジョビ®︎
エムガルティ®︎の解説をこの間したかと思えば、医療の世界は日進月歩で、このコロナ禍でも既に他に2種類のCGRP製剤が使用可能となりました。
まずはAmgen社から発売されたアイモビーグ®︎です。実は日本も含めて全世界で一番最初に臨床治験が行われたCGRP製剤なのです。欧米ではエムガルティ®︎よりも早く2018年に先行販売されていましたが、日本では2021年8月12日に使用可能となりました。アイモビーグ®︎はErenumabという世界で唯一のCGRPが神経に作用できなくなる様にする抗CGRP受容体抗体です。
エムガルティ®︎と後述のアジョビ®︎はともにCGRP自体の効果をなくす抗CGRP抗体ですが、全てが皮下注射薬でかつ、モノクローナル抗体です。どの薬剤が一番効くか?ということが気になるところですが、この3剤を直接比較した検討はありませんので、ご自分に合うCGRP製剤を見つけるしかありません。
アイモビーグ®もたくさんの前述の臨床試験が行われており、日本人片頭痛患者261名を対象とした国内第Ⅲ相試験(20170609試験)では、反復性片頭痛、慢性片頭痛ともに投与開始1ヵ月後から、1ヵ月間に片頭痛が起こった日数(Migraine Headache Days:MHD)は約3日間減少しており、アイモビーグ®︎70mgを継続した4~6ヵ月では3.6日減少し、31.5%の患者ではMHDが半分以下になりました。反復性片頭痛患者955名を対象とした海外第Ⅲ相試験(20120296試験/STRIVE試験)でもアイモビーグ®︎70mgを継続した4~6ヵ月では3.2日減少し、43.3%の患者ではMHDが半分以下になりました。この試験が終了する13ヵ月後までMHDが半分以下になった患者は61.0%で、MHDがゼロ、つまり、片頭痛発作が起こらなかった患者は19.8%もいました。慢性片頭痛患者667名を対象とした海外第Ⅱ相試験(20120295試験)では、アイモビーグ®︎70mgを継続した3ヵ月間の最後の1ヵ月でMHDは6.64日減少し、39.9%の患者ではMHDが半分以下になりました。その他にも反復性片頭痛患者483名を対象とした海外第Ⅱ相試験(20120178試験)では、試験が終了する16ヵ月後の最終1ヵ月でMHDが半分以下になった患者は64.8%でした。アイモビーグ®は70mgのみ保険適応となりましたが、日本でも行われました治験で70mgから140mgに接種量を増量した患者では、有意差こそ出なかったものの、奏効する患者ではMHDが140mgに増量してから激減もしくはゼロになっていました。
また、アイモビーグ ®︎を投与した薬物乱用頭痛(MOH)患者149例ではMHDが50%以上減少した患者は51%、75%以上減少した患者は20%であったという報告1)があり、MOHにも奏効すると考えられます。
アジョビ®は Fremanezumabという抗CGRP抗体で、前述の2剤同様にいくつかの臨床試験が行われています。反復性片頭痛患者357名を対象とした日韓国際共同第Ⅱb/Ⅲ相試験では、アジョビ®︎225mgを4週間に1回でも12週間に1回でも投与後1ヵ月後からMHDはほぼ同様に8.6~8.8日から4.6~4.8日に減少しました。反復性片頭痛、慢性片頭痛1,888名を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(HALO長期)では反復性片頭痛患者では4週間に1回でも12週間に1回投与でもMHDはほぼ同様に9.1~9.2日から4.1~4.2日に減少し、慢性片頭痛患者でも4週間に1回でも12週間に1回投与で、やはりMHDはほぼ同様に16.4日から8.8~9.9日に減少しました。同試験でLiptonら2)は中等症度~重度のうつ病を伴う慢性片頭痛219名に対するアジョビ®︎の効果と安全性を評価しており、アジョビ®︎は片頭痛治療への有効性のみならず、併発するうつ病の影響を軽減させると報告しています。
次回はCGRP製剤のデメリットと、どのCGRP製剤を選ぶ?(本当に勝手な私見のみですが、CGRP製剤を片頭痛患者さんに投与しようと考えていらっしゃるDoctor、CGRP製剤を使ってみたいと思っていらっしゃる患者さんの一助となれば幸いです)に解説します。