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シニアの頭痛(其の一)

Dr.丹羽の頭痛コラム

20歳代や30歳代と異なり、大人には大人の注意しなければならない頭痛があります。
シニアにとって、見られやすくなる、もしくは必ず見られるようになる傾向として、閉経、ストレス、肥満、血圧上昇、不眠、うつ傾向、アルコール摂取量増加、免疫力低下・・・と多々あります。
危険な頭痛、つまり放置してはいけない頭痛について説明します。
まずはクモ膜下出血です。クモ膜下出血は突然襲ってくるバットで殴られた様な今まで経験したことのない頭痛と医学部の教科書には良く掲載されています。
脳には脳実質(いわゆる脳みそ)を保護するために脳を包んでいる三層の膜があるのですが、クモ膜とはその真ん中の膜を指します。その下に出血しても脳実質内には出血は及びませんので、手足の麻痺や痺れなどは起きません。しかし、クモ膜の下には、脳に酸素と栄養を送るための太い動脈が張り巡らされていること、その太い動脈の瘤が破れて急速に脳の表面全体に出血が広がって、外から脳実質を圧迫するので意識障害や嘔吐、痙攣発作などが起きます。非常に重篤な疾患で、我が国の突然死全体の6%を占め、クモ膜下出血後早期に治療をしないと約50%が死に至ります。一命を取り留めても、クモ膜下出血発症後2?3週後に脳血管攣縮という血管がソーセージ様にうねり、血管内が詰まってしまう合併症や水頭症、心臓合併症としてのタコツボ心筋症・・・と重篤な合併症が多数あり、社会復帰できる方は全体の1/3にも満たない。と医学系の教科書にもネット上にも沢山掲載されています。
逆に考えれば、動脈瘤が破れたらクモ膜下出血ですが、破れなければ単なる脳動脈瘤持ちで無症状となります。とは言え、破れたら一大事です。脳動脈瘤の大きさや形にもよりますが、外科治療(開頭で瘤にクリップをするクリッピング術、カテーテルにて瘤にコイルを詰めるコイリング術などがあります)を行わずに、長年、経過を見るだけで良い方も沢山いらっしゃいます。クモ膜下出血は低気圧の時に起きやすい、女性に多い、痩せている方に多い・・・とありますが、是非、注意して頂きたい事は3点。厳重な血圧管理、沢山のアルコールは絶対に摂取しない、禁煙する、です。
もう一点、激痛をイメージしてしまうクモ膜下出血ですが、最近、walking SAHという概念が注目されています。SAHとはクモ膜下出血の英語の略で、つまりは歩くとクモ膜下出血?、ではなく、歩いて医療機関を受診されるクモ膜下出血患者さんの事を指します。
昨今、高血圧の方は内服治療されていたり、食事に注意されていたりとある程度のコントロールができている方が多く、また、昔のように朝から飲酒、もしくは朝まで飲酒する方も少なくなってきています。そうなるとリスクも軽減するのは当然でして、そのような方達の脳動脈瘤が破裂しても、少量の出血で自然に動脈瘤の穴が塞がることがあります。意識障害や痙攣、嘔吐などなく、頭痛のみを経験することになるのです。しかし覚えておいて下さい。どんなに軽症でもクモ膜下出血です。クモ膜下出血の頭痛は最低でも2?3週間は持続します。どんなに軽い頭痛でも、今までに経験したことのない頭痛で継続するようでしたら、必ず、医療機関を受診して下さい。