シニアの頭痛(其の三)
シニアに気をつけて頂きたい頭痛、其の三です。
まずは褐色細胞腫です。20代?40代での発症が多くなっていますが、平均発症年齢は54歳と少しシニア系の疾患です。頭痛、高血圧、起立性低血圧、頻脈や動悸、吐き気、異常な発汗、不安感、過呼吸、皮膚が冷たいのに湿っている、胸が苦しい、みぞおち付近が痛む、呼吸困難感、便秘といった多彩な症状があります。運動や食事などの刺激により急激に血圧が上昇することにより起こってしまう高血圧クリーゼや心筋梗塞様発作も認めます。この急激な血圧上昇が頭痛の原因になってしまうのです。
予防法として、体操や食事、睡眠時間の保持などがありますが、この疾患は診察した医師が疑わなければ診断がなかなかつきません。
睡眠時頭痛(通称、目覚まし時計頭痛)は明け方の決まった時間に頭痛が必ず起きてしまい、そのせいで覚醒するものです。
睡眠中の覚醒の原因としては睡眠時無呼吸症候群、夜間の高血圧、低血糖発作、薬物乱用性頭痛、コラム35で取り上げました脳腫瘍などがあります。逆に考えますと、片頭痛や緊張型頭痛など、通常の頭痛では痛みのせいで明け方に覚醒することはないのです。
睡眠時頭痛の原因は残念ながら解明されていません。
一つの可能性として、レム睡眠とノンレム睡眠は2時間おきに起きるのですが、レム睡眠の時は脳が活発に活動し脳血流量が増加します。それに伴い活性酸素が発生してしまって頭痛が起きてしまうものです。
もう一つの可能性としては、私たちの脳は体内時計を持っており、視床下部の視交叉上核が光刺激を受けて生体リズムを刻んでいます。この生体時計が何故か一定時間になると血管の拡張ボタンを作動させて頭痛を起こすというものです。
治療として、睡眠前のコーヒー、炭酸リチウム製剤、ラメルテオン(ロゼレム)でメラトニンという眠くなるホルモンを誘導させる治療法などがあります。
ちなみにメラトニンは、脳松果体から分泌されるホルモンで、深部体温を下げ、副交感神経を優位にして気持ちを落ち着かせる、呼吸・脈拍・血圧を低くする作用を持っています。
ちなみに先程でてきました睡眠時無呼吸症候群は脳内の酸素濃度が減少し、その結果、脳内の二酸化炭素濃度の増加で脳内の血管が拡張する結果、頭痛が起きます。二酸化炭素は脳血管を拡張させる、とても強い要因なのです。また、イビキが強い方はご注意を!睡眠時無呼吸症候群の24%にイビキがみられます。睡眠時無呼吸症候群では起床後の頭痛の他に、夜間覚醒が多くなる、熟睡感がない、日中の眠気が強い、起床時の胸焼けやノドの痛みが持続する、性欲減退や勃起障害などの症状もみられます。
夜間の高血圧で頭痛のために覚醒してしまう値は、上の血圧(収縮期血圧といいます)が200以上もしくは下の血圧(拡張期血圧といいます)が110以上で起こるとされています。側頭部、つまりコメカミから後頭部が痛くなる方が多いようです。