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シニアの頭痛(其の二)

Dr.丹羽の頭痛コラム

クモ膜下出血以外にも注意しなければならないシニアの頭痛には以下の疾患があります。
慢性硬膜下出血、側頭動脈炎、急性緑内障、Crowned-Dens症候群、うつ病、褐色細胞腫、睡眠時頭痛などがあります。
慢性硬膜下出血は、アルコール好きの方に多く、軽い頭部外傷から1?2か月後に発病します。飲酒量が増えると脳萎縮がみます。また、肝臓にも負担をかかるのですが、肝臓には出血を止める因子があります。怪我で出血しても、必ず血は止まりますよね、肝臓のお陰です。慢性的なアルコール摂取により、肝臓内の血液凝固因子が低下して、血が止まりにくくなる、出血しやすい状態にもなります。
そのような状態で何回か頭をぶつけていると、萎縮した脳と頭蓋骨の間、硬膜(一番外側の膜)の下に水が溜まってきます。この状態を硬膜下水腫と言うのですが、この水腫に毛細血管が集まってきて、脆い毛細血管はその後の頭部の軽いゴッツんで切れてしまい、硬膜下水腫から硬膜下出血となるのです。
ちなみに、頭部外傷後は頸椎捻挫、いわゆるむち打ちにもご注意を。
コラム38で既に取り上げました側頭動脈炎は50歳以上の方に起きやすい疾患です。こめかみにある浅側頭動脈に炎症が起きて、こめかみがヅキヅキ痛くなる疾患です。虚血性視神経症(つまりは目が見えなくなる)が始まって、すぐにステロイド治療をしないと失明してしまう恐い疾患です。
急性緑内障は、霧視、羞明、充血が特徴で眼球が固くなるため、まぶたの上から触っても分かる疾患ですが、急性緑内障も片頭痛やクモ膜下出血と紛らわしい頭痛を自覚します。
コラム30で取り上げましたCrowned-Dens症候群は60y/o以上の女性に多くみられます。頸椎の偽痛風(ピロリン酸カルシウム2水化物)沈着によるものですが、け部を前後に動かしても痛みは起きませんが、頸部を左右に振ると強い痛みを感じるものです。
通常は20?40歳代に多いのですが、節々が固くなってくるシニアの年代では、急激な頸部伸展、強めの首マッサージを受けるだけで、コラム13で取り上げました椎骨動脈解離を起こすこともあります。
うつ病もシニア世代の頭痛として忘れてはならないものです。
良く自己チェックとして、
①今まで楽しかったことに興味がなくなった、楽しめない
②気分が落ち込んだり、憂うつになる
③なかなか寝付けない、途中で目がさめる、もしくは逆に眠り過ぎる
④いつも疲れる、気力が出ない
⑤食欲がない、もしくは食べ過ぎる
⑥自分はダメな人間で、家族に対して申し訳がないと感じる
⑦新聞を読んだり、テレビを見るなど、簡単な集中が難しい
⑧動作や話し方が遅くなる、もしくはそわそわしたり、落ちつかない
⑨死んだ方がましと思ってしまう
の半分以上で「うつ病」と診断・・・は良くある方法です。私は精神科専門医ではありませんが、(I)いつも喉の奥に違和感を感じる、(II)朝は苦手で起きにくいけど、夜になるに従って元気になる、つまりはなかなか眠くならない、(III)食事・洋服・旅行など興味があった物事が面倒くさい、の3つが当てはまれば、うつ病の可能性が大です。
きちんと専門医に診てもらって下さい。
褐色細胞腫、睡眠時頭痛については次回、お話しします。