トリプタン服用のベストタイミング
片頭痛の患者さんからトリプタンの服薬タイミングについて良く質問を受けます。
最近の片頭痛患者さんはメディアを含め様々な方法を駆使して色々な事をご存知で、頭痛治療が不得意な内科医より、いえ、頭痛治療を得意としない脳神経内科医や脳神経外科医よりも確実に良いsuggestionができるのだろうなぁ!と感心しています。
そのような皆さんは、片頭痛の予兆期や前兆期では服用せず、片頭痛発作が始まったら、なるべく早期にトリプタンを服用するとご理解されています。
トリプタン関連で、良く聞かれる質問を私なりにまとめてみましたところ、以下の3点が主たるものでした。
①片頭痛発作が起きた後、いつまでならばトリプタンは効くの?
②トリプタンには何種類かありますが、どれも似たり寄ったりなの?
③以前はトリプタンが良く効いていたのに、最近はタイミング良く服用しても効かなくなってきた。トリプタンは、もう効かないの?
コラム(40)で私がトリプタンに関して少し触れましたが、①~③の解答になる様な事については触れておりませんでした。
トリプタン製剤は世界では7種類、日本では5種類が使用可能です。
スマトリプタン(イミグラン錠50mg)、ゾルミトリプタン(ゾーミッグ錠2.5mg、ゾーミッグ錠2.5mg)は2時間以上空けて1日に4錠まで服用可能です。イミグランキット皮下注3mgは1時間以上空ければ1日2回まで、イミグラン点鼻薬20mgも2時間以上空ければ1日2回まで使用可能です。
エレトリプタン(レルパックス錠20mg)、リザトリプタン(マクサルト錠10mg、マクサルトRPD錠10mg)は2時間以上空けて1日に2錠まで服用可能です。ナラトリプタン(アマージ錠2.5mg)も4時間以上空ければ1日に2錠まで服用可能です。
①のトリプタン服薬タイミングですが、予兆や前兆には効きません。片頭痛発作が起きてから、なるべく早期に服用するのが効果が高い事も皆さん、良くご存知です。どのトリプタン製剤でも片頭痛発作が起きてから、どのタイミングでも効くことになっています・・・が、私の拙い経験からは、片頭痛発作のピーク、つまり痛みのピークが過ぎてしまうと効果があまりない様に感じます。
片頭痛の痛みが増強している間は、発作後の時間が経過していてもトリプタン製剤を服用すべきだと考えております。
たまに台風など急に気圧が変わる時や生理が始まる初日に片頭痛発作がほぼ毎回起きるので、翌日に台風上陸(最近は"頭痛ーる"という便利なアプリも無料でダウンロードできますし・・・)や生理が始まるとお分かりになった時に、長時間作用型のアマージを片頭痛発作が起きてもいないのに頭痛専門医に勧められて服用しているという患者さんに遭遇しますが、トリプタン製剤は片頭痛発作が起きてから服用と覚えておいて下さい。ここだけのお話、片頭痛が楽になれば良いので、台風上陸直前や生理前日に服用した方が楽であれば、それも然りです。
②のトリプタンの同異についてです。片頭痛発作に効果があれば、どれでも良いのですが、イミグランに比べてゾーミッグもレルパックスもマクサルトもアマージも半減期(薬が体内に残って効いている時間)が長いため(ゾーミッグは代謝産物も片頭痛に効くため効果持続時間が長い)、一錠服用すれば効果持続が期待できるのですが、アマージだけは最高血漿中濃度到達時間が長いため即効性には欠けるという欠点があります。しかし、アマージはトリプタン製剤の中で半減期が最も長いので、月経時片頭痛の様に、片頭痛発作が数日に及ぶ様な時にはアマージが良いかもしれません。
中枢移行(脳には血液脳関門という箱根の関所みたいなものが存在し、容易に脳内には入ってこないのです)が多いと、胸の締め付け感やめまい感、ふらつき、吐き気などの副作用が出やすくなります。イミグランやアマージは中枢移行が少なく、ゾーミッグやレルパックス、マクサルトは中枢移行が多いので、副作用も多少は多くなります。副作用が強い方はこの点にご注意を!
現状ですが、レルパックス錠、アマージ錠、イミグランキット皮下注、イミグラン点鼻薬以外はジェネリック医薬品(先発品が3割負担の患者さんでどのトリプタンも1錠約¥330の負担がありますが、ジェネリックですと半額以下の負担になります)が存在します。が、患者さんによってはジェネリックにすると効きが悪い・・とか、マクサルトRPD錠は口の中で溶けてこない・・とか、先発品との違いがある様です。
トリプタンは効果は勿論ですが、副作用やコストも考慮して服用される事をお勧めします。
③の以前は効いていたトリプタンが効かなくなってきた!に関しましては、アロディニアという現象がポイントになりますので、次回にお話しします。