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トリプトファンって良いの?

Dr.丹羽の頭痛コラム

片頭痛をお調べになったことがある方ならば、セロトニンという言葉を聞かれたことがあるかもしれません。セロトニンは私たちの体内になくては困るホルモンです。よく食事療法でセロトニンの材料となるトリプトファンを摂取しましょう!と書かれているのを目にします。
まず、セロトニン(5-HT)に関する一般知識から。
セロトニンは私たちの体内で消化管に90%、血液中に8%、脳内には2%しか存在しません。
しかし、セロトニンは神経の情報を伝達する物質であり、かつホルモンとしてもの働きもあり、私たちの脳ではとても大切な役割を果たしています。
覚醒レベルの調節、REM睡眠、うつなどの気分調節、「キレる」行動、生物(体内)時計の同調などなど・・、たくさんの事にかかわっています。
片頭痛発作時には全身のセロトニン代謝が低下していることも証明されています。小麦、乳製品、肉食に偏った食事や不規則な生活(日光を浴びることがほとんどない、朝出かける直前まで寝ている、昼夜逆転)で脳内のセロトニンは慢性的に低下し、約5年で脳が過敏状態となり、allodynia(アロディニア)が出現すると言われています。
アロディニアについては、また違う機会にご説明しますね。
確かにトリプトファンはアミノ酸の一種でセロトニンの材料となります。なぜ直接、セロトニンを摂取しないでトリプトファンを摂りましょう!と書かれているかと言いますと、脳には血液脳関門という、いわば関所みたいな部位が存在して、脳内に容易に通過できないように制御しています。セロトニンは大切なホルモンですが、血液脳関門を通過できませんので、血液脳関門を通過できるセロトニンの材料のトリプトファンを摂取しましょうということになる訳です。
トリプトファンは牛乳、赤身のマグロ、納豆などの大豆製品、バナナ、パイナップル、チーズ、ケールなどに多く含まれますが、残念ながら大量に摂取しても、ほとんど脳内のセロトニンには変化せず、片頭痛に効果は認められません。
では、セロトニンは増やせないのでしょうか?
ちなみに、セロトニンは脳の縫線核という部位から出ますが、睡眠中はほとんど分泌させません。朝日浴や朝の運動(15分↑/日のwalking)でセロトニンが分泌されます。つまりは覚醒時にしかセロトニンを上昇させることができないのです。そのためには、リズム運動が良く、坐禅の呼吸法、自転車、ガムを噛むだけでもセロトニンを効率よく上昇させます。
朝起床後から就労・就学までの簡単な運動でセロトニンは増やせますので、皆さんも5分だけ早起きして、ほんの少しだけ頑張ってください。
最悪、上品な行為ではありませんが、就労・就学までの間にガムを?むだけでも効果はあります。