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ニューロモジュレーション (neuromodulation therapy)

Dr.丹羽の頭痛コラム

難治性頭痛に対して、電極を頭蓋内に埋め込み後頭神経刺激や深部脳刺激療法など神経刺激法が試されてきましたが、手術痕の痛みや感染、死亡されてしまった例もあり、現在はあまり推奨されていません。
ちなみに後頭神経刺激療法は、難治性群発頭痛の患者さんと慢性片頭痛の患者さんを対象に臨床試験が行われており、慢性片頭痛の患者さんでは56%の改善率が報告されています。深部脳刺激療法とは、難治性の群発頭痛の患者さんに対して、視床下部というところに電極を入れ、後部視床下部を刺激する治療法です。1〜6年の観察期間で群発頭痛の発作消失率は42%と報告されています。
それに代わり、非侵襲的神経刺激法というニューロモジュレーション (neuromodulation therapy)、つまりは神経調節療法が色々と開発されてきています。代表的なデバイスとして、Cefaly社の経皮眼窩上三叉神経電気刺激装置、electroCore社の非侵襲的迷走神経刺激装置、経頭蓋磁気刺激装置があります。
コラム(80)、(81)、(82)で既にいくつかご紹介をしていますが、今回、少しまとめてお話をします。
① 経皮眼窩上三叉神経電気刺激装置
ベルギーのCefaly Technology社が開発し、既に欧米では片頭痛予防療法として承認されている治療法です。Cefalyはおでこの真ん中辺りに刺激装置を装着して、三叉神経の第一枝(三叉神経は三つの得たに分かれていて、第一枝の眼神経、第二枝の上顎神経、第三枝の下顎神経に分かれます)に細かな電気刺激を入れることによって、神経の錯覚を起こさせるデバイスです。この刺激を3ヶ月間、毎日20分行うとで、片頭痛予防薬を毎日服用している患者さんと同程度に発作回数を減らすことがてきると報告されています。副作用は注意力と集中力の低下がありますが、これが詰まり鎮静効果と判断でき、妊婦さんの使用も可能とされています。
② 非侵襲的迷走神経刺激装置
米国electroCore社が非侵襲的迷走神経刺激術をgammaCoreというデバイス(コラム59の写真)により片頭痛発作や群発頭痛発作を抑えるというもの(コラム59)です。そのデバイスがさらに新しく小さくなり、より使いやすくなっています(コラム80)。
欧米では臨床治験が進んでいながらも既に米国では片頭痛および群発頭痛に対して保険適応があり、欧州でも片頭痛に対しては保険適応があります。
副作用としては迷走神経を刺激するため、徐脈や声帯麻痺(声が出ない)が懸念されましたが、現状ではその副作用もないようです。
驚くべきこととして、通常、この様なデバイスは急性期療法もしくは予防療法のどちらかが主体となり、両方に保険適応が認められることは非常に少ないのですが、90秒のパルス刺激で片頭痛発作を抑制でき、長期的、つまり、予防療法としても効果が出ています。
また、妊婦の方への悪影響も現時点ではなく、妊婦さん、授乳婦さんや妊活をしている方にも予防的に使用することができる治療の一つになります。
③ 経頭蓋磁気刺激装置
元々、うつ病や統合失調症に使用されてきたデバイスですが、eNeura社の経頭蓋磁気刺激装置が前兆のある片頭痛さんで片頭痛発作のみではなく、光過敏や音過敏、吐き気も軽減しており、米国以外でも承認される可能性が高いデバイスの一つとなりそうです。
その他にもまだ確証はないものの、経頭蓋直流刺激療法や翼口蓋神経節刺激療法、耳介側頭神経刺激療法他(慢性片頭痛)、迷走神経刺激療法(片頭痛発作抑制効果)などの神経刺激法も検討されています。