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下垂体腺腫、下垂体卒中、Empty sella症候群

Dr.丹羽の頭痛コラム

頭痛を起こす稀な脳神経疾患、その2です。
下垂体腺腫とはトルコ鞍内にあります下垂体というホルモンを産生するところから発生する良性の腫瘍で、20〜50歳に多く、全脳腫瘍の18%も占めています。60%がホルモン産生腫瘍でプロラクチン(PRL)産生腫瘍、成長ホルモン(GH)産生腫瘍、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生腫瘍があります。PRLとACTH産生腫瘍は女性に多く、GH産生腫瘍はやや男性に多いとされています。PRL産生腫瘍は女性ならば乳汁分泌と無月経、男性ならば性欲低下、GH産生腫瘍は末端巨人症、ACTH産生腫瘍はクッシング症候群(ステロイドの副作用状態になり、ムーンフェイスや中心性肥満、皮膚萎縮などを起こします)。この下垂体腺腫内に急に出血を起こす下垂体卒中という病気があり、突然の激しい頭痛や視力・視野障害をきたす事があります。
治療としてはPRL産生腫瘍はパーロデル®️や週1回の服用で済むカバサール®️による薬物療法、開頭手術もしくは経蝶形骨洞到達法(鼻の穴からアプローチ)があります。
Empty sella(エンプティ・セラ)症候群とは、トルコ鞍空洞症候群とも言われ、トルコ鞍が脳脊髄液で満たされ、それにより下垂体がトルコ鞍の壁に押し付けられてペッタンコになるためトルコ鞍が空洞に見えるものです。脳脊髄液が下垂体とトルコ鞍の壁を圧迫し、トルコ鞍は拡大し下垂体は小さくなります。この症候群には先天性、損傷に続発するもの(分娩後、外科手術、頭部外傷、放射線療法)があります。
診断はMRIで容易にできます。
女性に多く(>80%)、肥満(約75%)、高血圧(30%)、頭蓋内圧亢進(10%)、髄液鼻漏(10%)を認めることがあります。Empty sella症候群では下垂体機能は正常なことが多いですが、下垂体機能低下症が生じることもあり,頭痛および視野欠損が生じることもあります。GHやPRL、ACTHを分泌する小さい下垂体腫瘍が併存することもあります。重篤な症状が生じることはめったにありません。しかし、約半数で頭痛を生じますが、通常前額部から眼窩部における頑固な持続性の疼痛であることが多いのも事実です。
そして,これらの頭痛は特別な治療の対象となっていないのが現状ですが、経蝶形骨洞到達法による手術で頭痛が消失した報告もあります。
通常、頭痛に対して手術は行いませんが、私の経験上、インドメタシン(インフリー®️)、ナプロキセン(ナイキサン®️)が効くように思います。