低気圧頭痛(梅雨頭痛)
いつまでも続き、先の見えない「マスク頭痛」。
それに加えて今年は、まだ5月なのに、東京でさえ「梅雨」入りしそうな勢いです。
ところで、「梅雨」って、日本には4回あるのをご存知でしたか?
日本では春夏秋冬と季節の変わり目に梅雨のような天気が発生します。「梅雨」は“梅が実る頃”の雨から命名され、夏から秋の変わり目には「秋雨」、秋から冬には「さざんか梅雨」、そして冬から春には「菜種梅雨」が発生します。ただ、「秋雨」の時期は台風も多く、「梅雨」よりも雨量は多くなり「梅雨」なみに頭痛が多くなりますが、「さざんか梅雨」や「菜種梅雨」は雨量や気圧変動も強くなく、あまり頭痛の引き金にはなりません。
「気象病」の代表格でもある片頭痛がなぜ、これからの時期に起こりやすくなるかはコラム(37)でも説明しましたが、今年はマスク頭痛に加えての「低気圧頭痛」ですので、今回は少しデータも含めて説明します。
気圧や湿度、温度と片頭痛の関係に関しては、今までもたくさんの報告があり、低気圧>高湿度>高温の順序で片頭痛に影響をきたすと考えられてきました。
ところが、2019年にハーバート大学@Bostonから様々な外的要因(気圧、湿度、温度、PM2.5、オゾン、一酸化炭素、二酸化窒素・・・)により、片頭痛にどの様な影響かあるのか、詳細な報告がなされました。
それによれば、片頭痛に影響をおよぼす要因としては、高湿度>低気圧>高温で、それもボストンの4〜9月の暖かい気候(東京の3〜10月)という条件下でのみに当てはまり、冬の湿度や気圧は片頭痛に関与していませんでした。つまりは、寒い時期の雨などは片頭痛の誘発因子にならないということです。
では、高湿度はどれ位以上だと片頭痛患者さんにとって悪影響をおよぼすのでしょうか?
残念ながら、何%以上から悪影響という報告はなく、湿度が高ければ高いほど、悪影響を及ぼすという報告しかありませんでした。
気圧変動に関しては、片頭痛発作は通常の平均気圧である1013hPa(ヘクトパスカル)から下がれば下がるほど生じやすくなるという訳ではなく、「気圧が5hPa以上低下する前日に片頭痛が悪化」して、「5hPa以上高くなる2日前に片頭痛が改善」すると報告されています。
仮に東京にいたとして、南西から台風が近づいてきた場合、「一日前に5hPa以上低下」している地域は九州や沖縄辺りと推測され、その辺りに台風が上陸した時に、東京在住の方は片頭痛が起こってしまうのです。
気圧が5hPa下がる環境とは、標高が50m上がる(高層マンション12〜13階に相当)、高速道路でトンネル内に進入した時(最大で15hPa下がることもあるようです)などが当てはまりますので、高速道路で何回もトンネルに出入りしていると片頭痛が起こることがあります。
急激な気圧低下では、身体の外から押さえる力が少なくなり身体は膨張する傾向になります。飛行機の中や高い山頂で、ポテトチップの袋がパンパンに膨れたところ見た事があると思います。この膨張しようとする変化に対して脳の視床下部というところにある交感神経が活発になり、身体が敏感になり神経痛(後頭神経痛など)を起こしたり、痛みを感じる神経を刺激するようになってしまいます。
また、低気圧では空気中の酸素濃度が低くなり、「息苦しい」と感じなくても血液中の酸素の量は低下するため、酸素が沢山必要な脳の血管は拡張します。この結果、血管痛が起きたり、神経を圧迫して片頭痛が生じるのです。
ちなみに、梅雨は温暖前線と寒冷前線が停滞するために起こるとされており、この2つの前線により気圧はとても低くなるのですが、急激な気圧低下ではなく持続的な気圧低下であり、梅雨時期の片頭痛発作は気圧変化よりも、ジメジメした高湿度の方がずっと悪影響ということになります。しかし、stay homeの環境下で湿度を下げることは、除湿機やエアコンのドライモードを使えば対処できます。梅雨時期の平均湿度が75〜80%位ですので、快適に感じる湿度40〜60%を一つの目安としてみて下さい。
湿度の高い梅雨時期に起こる頭痛とは、脳の血管拡張が原因となる片頭痛と後頭神経痛なのです。そこにマスク頭痛も加わるので大変です。
2021年の梅雨は早そうですから、
①規則正しい生活を心がける→自律神経を乱すような午前中にダラダラしたり深夜まで起きていたりする生活はやめましょう。
②ジメジメとした梅雨時期は食欲がなくなることも多く、湿気によるトラブル(東洋医学での「湿邪(しつじゃ)→“余分な水分”によるさまざまな症状)の防止のため、利水・利尿食材としての豆類豆類(大豆、あずき、えんどう豆、枝豆など)、ウリ類(きゅうり、スイカなど)、香味野菜(みょうが、パクチー、大葉など)、とうもろこし、海藻類を摂取するようにしましょう。
③身体を冷やし過ぎないようにする→除湿は大切ですが、ジメジメしていてもクーラーをガンガンとつけてしまうと、身体が冷えすぎ、首や肩の凝りを引き起こすことにより緊張型頭痛(首こり・肩こり頭痛)を誘発してしまいます。