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国際頭痛学会 in Vancouver(その3)

Dr.丹羽の頭痛コラム

次は最近のトピックスであるCGRP受容体拮抗薬に奏効性を欧米全体でみた報告です。
発表自体はUSAハノーバーのDr.からでしたが、ドイツやデンマークのデータも含まれていました。
ErenumabというCGRP受容体拮抗薬が、薬物乱用状態(頭痛の頓挫薬を服用し過ぎている)もしくは薬物乱用状態になっていない慢性片頭痛患者さんに対する効果を検討したものでした。
Erenumabを70mgもしくは140mgを皮下注射し、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月後の片頭痛発作日数/月を検討すると、70mgでも140mg投与でも、また、薬物乱用状態になっていようがいまいが、Erenumab投与1ヶ月後から5~6日の片頭痛発作日数の軽減を認めました。
Erenumab投与3ヶ月後に薬物乱用の状態から離脱できた患者さんは、単純鎮痛薬(カロナールやイブプロフェンを15日以上/月)による薬物乱用状態>トリプタン製剤(10日以上/月)による薬物乱用状態>多種の鎮痛薬使用(10日以上/月)による薬物乱用状態の順でしたが、どの様な薬物乱用頭痛からでも離脱でき得る可能性があると断言していました。慢性片頭痛患者さんを閃輝暗点を伴う患者さんと伴わない患者さんに差が出るかも検討していました。
ちなみに閃輝暗点を伴う片頭痛患者さんは片頭痛患者さん全体の25~30%程度と言われています。結果は閃輝暗点を伴う片頭痛患者さんも伴わない片頭痛患者さんも同様にErenumabで発作日数が減りました。
この結果は血管収縮にしか作用しない作用機序のErenumabが、脳内変化が異なる片頭痛患者さんどちらにでも効いており、中枢性の効果もあると考えられるという事を示唆しています。
少し難解でしたでしょうか?
簡単に申し上げれば、このErenumabというCGRP受容体拮抗薬は、今までの予防薬よりも効き、尚且つ、薬物乱用状態になっている方を離脱させ得る可能性を併せ持ち、尚且つ、どの様なタイプの片頭痛にでも効いてしまうという新薬という事です。