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国際頭痛学会2019(Dublin)ーその3ー

Dr.丹羽の頭痛コラム

前回の続きです。
さらにもう1つは、「RE HALTER」という呼吸を調節して片頭痛発作を治すといもので、これはデンマークから報告でした。使い方は至って簡単でシンクロナイズスイミングのように鼻を洗濯バサミみたいなもので摘んで(要するに口呼吸にするだけです)、ビニール袋みたいなものを口に加えて吸ったり吐いたりするだけの方法なのですが、その吸う際の酸素濃度をご自分の吐いた息、つまりは二酸化炭素とfresh air(空気)をミックスすることにより正確にですが変えるだけのデバイスなんです。
このRehaler(写真)はNerivioと全く逆で、18歳以上の閃輝暗点を伴う片頭痛(少なくとも15分以上前に閃輝暗点もしくは明らかな前兆が発作前にある事が条件となります)が適応になります。基盤に喘息などの呼吸器疾患、高血圧・低血圧、貧血、脳動脈瘤、妊婦中の方は今のところ使用できないらしいのですが、欧米ではOTC製剤扱い(つまりは日本でいうところの市販薬扱い)なので、近い将来、上記の方達も使用できるようになってくると思います。
では、何故、Rehalerによる呼吸の調節で片頭痛発作が抑えらるのでしょうか?
少し難しい話になりますが、当然、通常の呼吸と比べますとご自分の二酸化炭素も吸うことになるので二酸化炭素の濃度は急激に上がるわけです。二酸化炭素は強力な血管拡張作用がありますので10秒以内に脳への血液循環も増え、また、脳内酸素濃度も50%以上増えるのです。この脳内血液循環量の増加と脳内酸素濃度の増加が、片頭痛予兆(閃輝暗点)の時や片頭痛発作の時に生じる脳内の血液循環量の低下や脳内酸素濃度の低下を抑えてくれることに繋がるのです。また、脳内の二酸化炭素濃度の増加は片頭痛発作時に起こる神経細胞の興奮や片頭痛発作を誘発するCGRPというペプチドの急激な分泌をも抑えてくれるのです。
ですので、予兆時にRehalerを使用して発作を起こさせないようにしたり、発作時にRehalerを使用して頭痛を軽減することができるデバイスなのです。
このような服薬しないで副作用もなく頭痛発作がなくなる方法がたくさん増えると良いですね。