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国際頭痛学会2019(Dublin)ーその5ー

Dr.丹羽の頭痛コラム

片頭痛は心筋梗塞や狭心症、脳梗塞になる危険性はあるか?、また、片頭痛治療薬で心筋梗塞や狭心症、脳梗塞になる危険性はあるか?というオランダのDr. MaassenDenBrinkからの報告です。
今までに様々な報告があり、片頭痛持ちは脳梗塞になりやすいとかトリプタン製剤を服用していると心筋梗塞や狭心症になりやすいなどどいう報告がある一方、全く脳梗塞や心筋梗塞には関係ないとする報告もありました。
何回もコラムに出てきております片頭痛のタネともいえるタンパクCGRPが増えると心臓を栄養している冠動脈の元の部分ではなく末梢の細いすき部分が細くなり易いというdataがありました。
片頭痛に使用するトリプタン製剤はセロトニンの中でも5HT1Bと5HT1Dを刺激するわけですが、冠動脈や近隣にある肺動脈は5HT1Bと5HT2Aが作用することが分かっています。
ちなみに肺静脈、心房・心室は5HT4が、大動脈弁は5HT2Bが作用します。
また、逆にCGRP拮抗薬ならば心筋梗塞を予防できるのか?という疑問が生まれてきます。
結果的にはそれは不可能でした。
では、本題の片頭痛や片頭痛特効薬のトリプタン製剤は心筋梗塞や脳梗塞の原因になり得るのか?ですが、まず、トリプタン製剤は血管収縮薬ですが驚くことに少量どころか、大量(薬物乱用の手前くらいまでのトリプタン製剤)に使用しても心筋梗塞や脳梗塞を増やすことはない!との事でした。
しかし、エルゴタミン製剤(クリアミンなど)は2.5倍位、心筋梗塞のリスクを高くします。その他、イブプロフェン(イブやバファリンなど)やジクロフェナック(ボルタレンなど)も心筋梗塞のリスクを高くする事も立証されていました。
つまり、イミグランをはじめ日本にはマクサルト、ゾーミッグ、レルパックス、アマージと5種類のトリプタン製剤があり、全てが日本では心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、一過性脳虚血発作の方には使用禁忌となっているにも関わらず、トリプタン製剤よりも単純な鎮痛薬であるイブやボルタレンを頭痛で使用していた方が心筋梗塞や脳卒中になり易いという事です。
そして様々な報告をまとめると、現時点では片頭痛と心筋梗塞&脳卒中は全く関連性がないという細かなデータでした。