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夏バテ

Dr.丹羽の頭痛コラム

そもそも夏バテとは何なのでしょうか?                                                               
夏バテは、夏の暑さによる自律神経系の乱れから生じる様々な症状のことを言います。
夏バテは、暑気中り、暑さ負け、夏負けとも呼ばれるものです。
人間の身体は外気温に関わらず、体温を一定に保とうとする働きがあります。上昇した体温を下げるために、発汗は大切な役割を果たしています。汗を蒸発させて放熱、つまり体内の熱を下げているのです。汗をかくのはヒトとウマ位らしいです。サルは森で生活しており汗をかきません。ヒトに進化して草原を走り回り、不要な体毛を退化させた結果、発汗という機能がヒトには備わりました。体温調節を担っているのは、脳の視床下部という部位ですが、体温上昇の情報をキャッチすると、汗腺に「汗を出して!」という命令を出します。これ以外にも、汗により血液が濃くなる(血液の浸透圧が上昇する)と汗が抑制されますし、運動中は筋肉の中で疲労を感知するセンサーが働いて、これも発汗調節に関わります。また、緊張や興奮といった精神的なものがきっかけとなって、汗が出ることがあります、いわゆる「冷や汗」です。この場合は、おもに足裏や腋の下でどっと汗が出るのが特徴です。
いずれの汗も脳が指令を出す(自律神経系)ため、自分の意志で汗をコントロールすることはできません。
汗は血液中の血漿という液体から作られます。その液体から必要なミネラルなどは体内に再吸収され、エクリン腺というところから汗を皮膚の表面に出します。汗の99%は水分で、それ以外の成分は塩分がほとんどです。そして、汗は無臭なのです。汗が皮膚表面で垢や皮脂などと混じり合い、これを細菌が分解することでニオイ物質が発生します。
前置きが長くてなりましたが、湿度が高いと汗の蒸発が妨げられ、体温調節などの自律神経の乱れが起こり、身体の不調を引き起こします。それにより、食欲不振や消化機能の低下、また暑さによる睡眠不足が重なり、慢性的に疲労がたまります。
体温の調節に負担がかかる(室内外の温度差や猛暑が長期間続く)ことイコール、自律神経に負荷がかかることになります。
その自律神経が負荷に耐えられずに交感神経と副交感神経のバランスの乱れが生じ、夏バテが起こると考えられています。
夏バテは本来、夏の暑さで体力が低下し、秋口の気温差についていけず体調を崩すことで、夏の体調不良に使うのは誤用なのです。
では、夏バテ対策は何をすれば良いのでしょうか?
夏バテを引き起こす要因には、温度差による自律神経の乱れや睡眠不足、水分不足・栄養不足などが挙げられます。
自律神経は体温調節や血圧、心拍、内臓の働きといったさまざま活動を調整しています。
暑さによって自律神経が乱れることで、体温が上昇し、消化器系の不調=食欲低下、疲労感が増す、精神的な不調といった症状が現れ、これこそが夏バテの症状です。そこにストレスや不規則な生活習慣といった自律神経を乱す要因が加わると容易に夏バテになる訳です。
夏バテの大きな原因の1つは、発汗による水分とミネラル不足です。
気温の高い夏は体温を下げるために発汗量が増え、水分やミネラルを大量に失います。
成人の体のおよそ60%を占める水分は、血液や細胞内に含まれています。体内の水分が不足すると、血流が悪くなり、脳や筋肉、内臓へ送られる血液の量も減ることから、頭痛やめまい、だるさ、食欲不振、ひいては栄養不足などを引き起こすと考えられています。
言うまでもなく、夏バテ対策は、水分・栄養・睡眠を十分にとることです。
まずは夏バテ対策として、のどが渇く前にこまめに水分を補給しましょう。
のどが渇いたと感じた時点で、体はすでに渇き始めています。
水分の摂り方にもコツがあります。一気に水分摂取しても、体には貯まらず尿として排出されてしまいます。水分摂取するコツは、約1時間にコップ1〜2杯を目安にしましょう。
また、暑さに体を慣れさせることで、暑さに備えるのもポイントです。体が暑さに慣れることを暑熱順化と言います。
熱中症の危険が高まる前に、暑熱順化を無理のない範囲ですすめることが大切です。
個人差はありますが、暑熱順化するには数日から2週間程度かかります。暑くなる前から余裕をもって暑熱順化の準備を始め、暑さに備えましょう。
適度な運動は自律神経の乱れを整える効果がありますし、リラクゼーションはストレスを軽減し、自律神経のバランスを整える効果があります。
深呼吸やヨガ、瞑想などのリラクゼーション法を日常に取り入れることで、神経の乱れを整えることができます。
夏バテ対策には、必要な栄養素を含み、胃にやさしい食べ物をバランスよく摂ることも効果的です。
冷たい食事は、胃腸に負担がかかり栄養が吸収されにくくなるのでNGです。
夏バテを防ぐ食事には、筋肉の疲労回復を助ける「たんぱく質」を含む肉や魚、発汗により不足しやすい「ミネラル」が含まれている牛乳や海藻、疲労回復に役立つ「ビタミン」が豊富な野菜や果物がおすすめです。
夏バテ対策にお勧めな食べ物、また、頭痛持ちの方には是非とも食べて頂きたい食べ物を紹介します。
まずは水分の多いトマトやキュウリなどの夏野菜です。水分も豊富で、かつカリウム含有量も豊富です。
カリウムが不足すると、疲労の蓄積や食欲減退が起こり、夏バテする傾向があります。
さらに頭痛持ちの方は「スイカ」が一押しです。水分、糖分、カリウムの他、血管を強化するシトルリンという成分が含まれています。
夏は暑さで食欲が落ち、冷たい物を食べる機会も多くなり、胃腸が弱まる傾向があります。ペクチンは、胃粘膜を保護し、腸内の善玉菌を増やすなど、腸内環境を整えるので、ペクチンを多く含むオクラもお勧めです。
ビタミンが豊富な食べ物といえば、鰻です。ビタミンA、B群、D、Eを豊富に含み夏バテ対策に効果的です。
たんぱく質が豊富な豚肉もお勧めです。たんぱく質の他に、エネルギー生成を促し、筋肉などを維持・修復する作用があるビタミンB1を豊富に含んでいます。その他、カリウムやマグネシウムなど、夏バテ対策に役立つ栄養素も含んでいます。
クエン酸が豊富な梅干しも夏バテ対策に役立つ食べ物です。
クエン酸は胃酸の働きを助け食欲増進したり、たんぱく質の消化を促進したりする働きがあります。
梅干しを1日2〜3個取ることで食欲が回復し、夏バテ対策の効果が期待できます。
また、レモンはビタミンCも含まれ、ストレスの軽減や疲労回復などの効果を望めます。
ただ、クエン酸は一度にたくさん摂っても吸収されず、時間経過とともに排出されます。1日何回かに分けてこまめにとること、毎日続けてとることが大切です。
その他にも、麦茶(大麦には体を冷やす作用、ナトリウムやカリウムなどのミネラルが豊富、胃腸を保護する効果がある)、ビネガー(お酢に含まれる酢酸は体内に入るとクエン酸に変化し、疲労の原因となる乳酸の生成を抑制、筋肉痛を軽減しコリ頭痛にも効果的、消化酵素を活性化させる作用もあり、食欲増進)、生姜(発汗作用、保温、消化吸収の促進作用があります)、甘酒(ブドウ糖や必須アミノ酸、ビタミンB群など豊富な栄養素が摂取、疲労感の解消、腸内環境を整えて食欲増進効果)などがあります。
夏バテ対策には、十分な睡眠をとることも大切です。眠っているときの体温の調節は、自律神経によるため、自律神経に負担をかけないためにも、質の良い睡眠を取るために寝室の温度や湿度にも注意を払って下さい。
冷房を使うときは、室温は25~28℃、外気との温度差は7℃以内、湿度は40%~60%が目安ですが、前にもお話しした通り湿度メインで調節して下さい。