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熱中症による頭痛

Dr.丹羽の頭痛コラム

コラム(39)で熱中症による頭痛の予防法と解決法について説明をしましたが、この時期になって、皆さまから「熱中症って何なの?、どうして熱中症になるの?」、「熱中症になるとどうして頭痛が起きるの?」といった質問を良くお受けしますので、熱中症が起こるメカニズム、熱中症になると何故、頭痛が起こるのか?について説明します。
人間は体内で常に熱を産生(産熱)していますが、この熱を体外に放熱することで体温を36~37℃に維持しています。しかし、運動などで体を活発に動かすと筋肉でたくさんの熱が産生され体温が上昇します。たとえ体を動かさなくても暑いところに居るだけで体温は上ります。体温が上昇しますと、身体の表面を流れる血管が拡張し血流が増え、体内の熱を体外に逃がそうとします。この際、血液が身体全体に行き渡り、汗が蒸発する(汗は血液から作られます)ことで効率よく体内の熱を放出し体温を下げます。汗の中にはナトリウムという塩の元が多量に含まれており、血圧維持にも重要な役目を果たしていますので、水分やナトリウムを失うことで、一時的に血圧低下や脳循環不全を起こしめまいや立ち眩みを起こすことがあります。これを「熱失神」と呼びます。
発汗時に水だけを飲んで塩分を補充しないと体内の塩分が不足してしまいます。塩分には筋肉の収縮を調節する役割があるため、塩分不足により手足が攣ったり、筋肉がけいれんを引き起こすことがあります。これを「熱けいれん」です。
また、体温が急激に上昇する時は、多量の発汗により体内の熱を外に逃がします。この発汗により体内の水分を失うことになりますので、十分な水分を摂らないと脱水状態に陥ります。脱水状態が続くと倦怠感や吐き気・嘔吐、頭痛が起きるようになります。これを「熱疲労」と呼びます。
さらに体温が上がると、体温調節が追い付かなくなり、TNFαやIL-1βといった炎症性サイトカイン(ここは聞き慣れない言葉だと思いますのでスルーしちゃって下さい)という炎症の際に作られる炎症物質が体内に放出され細胞機能障害を起こし、脳をはじめとした様々な臓器に影響が出て、意識が朦朧としたり、けいれんを起こしたりします。これが「熱射病」で非常に危険な状態です。
現在では熱中症はⅠ~Ⅲ度に分類され、Ⅰ度が熱失神、熱けいれん、Ⅱ度が熱疲労、Ⅲ度が熱射病に相当します。
簡単に言えば、発汗の蒸発が体内の熱を放散する訳ですが、湿度が75%以上では汗が蒸発しないので体内にこもった熱は放散できなくなり、さらに熱中症が起きやすくなります。
また、甲状腺機能亢進症をお持ちの方や抗ヒスタミン薬(アレルギーの薬)を服用中の方は特に注意が必要です。
頭痛が起こるメカニズムは血管拡張、脱水、炎症性サイトカインが関与していると考えられます。頭痛の性状としては片頭痛に似たズッキンズッキンといった頭痛が多くみられます。
熱中症による頭痛の予防法や解消法についてはコラム(39)でご説明しましたので、ポイントだけおさらいです。
水分補給は「のどが渇いたな」と感じる前にして下さい。何故なら、「口が渇く」と脳が感じるためには血漿浸透圧(血管の内圧)が正常上限を1~2%上昇する必要があり、血管の中が脱水傾向になり、いわゆるドロドロ血、ネバネバ血になって初めて人は「口が渇く」と感じるのです。それでは「時すでに遅し」なのです。
水分摂取のスピードまで気になさる方がいらっしゃいますが、体内への最大水分吸収量は20ml/分、つまり1200ml/時であり、最大発汗量である2000ml/時には全く歯が立ちませんので、十二分の水分・塩分を大量に摂っていたとしても、発汗量を低下させるための休息時間は必要不可欠だということもお忘れなく!