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米国頭痛学会(AHS)年次meeting(その二)

Dr.丹羽の頭痛コラム

とにかく今回のAHSでは片頭痛発作に対する新たな急性期治療に関する報告が多くみられました。
既に昨年の夏にはある程度の報告がありましたEli Lily社が満を持して世に送り出そうとしている片頭痛急性期治療薬である5-HT1F受容体作動薬 Lasmiditanの報告もその一つでした。Lasmiditanはトリプタン系薬剤(これは5-HT1B/1D受容体作動薬で、日本ではイミグラン、ゾーミッグ、レルパックス、マクサルト、アマージがありますが血管収縮作用を有しており、狭心症やそのリスクがある方には禁忌の薬剤です)と異なり、血管収縮作用を有さず、片頭痛に関与するセロトニン(5-HT)受容体にのみ作用する薬剤です。3~8回/月(平均で5回/月以上)の片頭痛発作がある患者さんで、片頭痛発作後4時間以内にLasmiditanを服用したSPARTAN試験(Lasmiditan 50mg、100mg、200mg服用後2時間後の片頭痛発作の軽減程度と吐き気や光過敏・音過敏の軽減を観察)とSAMURAI試験(Lasmiditan 100mg、200mg服用後2時間後の片頭痛発作の軽減程度と吐き気や光過敏・音過敏の軽減を観察)の結果を合わせて報告していました。どちらの試験も狭心症やそのリスクがある患者さんを除外していない点が注目すべき点です。
Lasmiditan 50mgよりも100mg、100mgよりも200mgでより有意にpalcebo群と比べて、頭痛の軽減率、吐き気や光過敏・音過敏の軽減率が高かったのです。また、緊急性を要する副作用はなく、palcebo群に比べて有意に(と言っても全体の2%強程度でしたが)認められた副作用として非回転性めまい、触覚の違和感、眠気、倦怠感、吐き気、無気力がありましたが、どれも軽度のものでした。Eli Lily社はこの秋に米国食品医薬品局(FDA)に新薬承認を認めてもらう予定だそうです。
また、今後、このLasmiditanが長期的に服用しても(1ヶ月に何日もという意味ではありません、薬物乱用頭痛になってしまいますから)安全かどうかというGLADIATOR試験も進行中であると誇らしげに報告していました。
日本でも近い将来、Lasmiditanの臨床試験が始まり、早期に厚労省で認可されることを祈念します。
その他で皆さんにお知らせした方が良い報告としましては、ビタミンB2と生姜にはCGRPを抑制する効果があるそうで、あるサプリメント会社がマグネシウムとfeverfew(夏白菊)、ビタミンB2、生姜をブレンドして売り出す算段をしていました。気になって、生姜が入った漢方薬を起立性低血圧のある患者さんに日本では処方することがあるが、生姜は血流を良くするのでCGRPを抑制しても血流が良くなって片頭痛には悪いのでは?と質問してみました。嘘か誠かわかりませんが、そのサプリメント会社のDr.曰くは、「生姜による血流改善効果には数日~数週間の時間を要しマイルドな作用のため片頭痛には悪さはしないし、CGRP抑制はもっと早い段階で認められるので片頭痛治療にはピッタリの食物だよ!」だそうです。わが国では米国よりも生姜はより摂取していると思いますので、冷ややっこでも良いですし、お料理に混ぜても良いですし、もっと言えばジンジャーエールも良いのでしょうか・・?
そして、ビタミンB2の多いレバーや鰻なども摂取して、この暑い夏を乗り切って下さい。