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線維筋形成不全

Dr.丹羽の頭痛コラム

頭痛を起こす稀な脳神経疾患、その4です。
線維筋性異形成(fibromuscular dysplasia: FMD)は、主に若い女性から中年の女性にみられる中程度の大きさの動脈に起こる血管の病気です。
腎動脈に60〜75%、頭蓋外脳血管(内頸動脈、椎骨動脈)に25〜30%、内臓の動脈(腸骨動脈など)が9%、四肢の動脈が5%程度、起こるとされています。FMDの1/4以上の方には、一か所以上の血管病変があるとされています。脳血管に病変がある場合は95%が内頸動脈に、12〜43%が椎骨動脈に認められます。しかし、頭蓋内の動脈には病変はなく、若年性脳梗塞の重要な原因の一つです。
原因はよく分かっていませんが、FMD患者さんの7.3%に脳動脈瘤の合併があるとされています。両者の合併は、脳血管の結合織に問題があるためと考えられています。頚部内頸動脈の血管解離の15% は、基礎疾患にFMD があるとも言われています。
男女比は、1:3〜4と女性に多く、また家族性の発生もよく知られています。FMD自体の発生頻度は、日本では少なく欧米に多いとされていますが、アメリカでさえ0.02%程度と非常に低く、FMD自体の予後は決して悪いものではなく、偶然発見される場合も多くあります。しかし、脳梗塞や脳動脈瘤の合併は、その予後を悪くする因子です。
通常の脳梗塞による頭痛は椎骨脳底動脈系、後大脳動脈で多く認められ、後頭部頭重感や脳幹付近の耳介後部鈍痛が多いのが特徴です。
FMDは無症状が多いのですが、頭痛、めまい、耳鳴りなどを訴える方もいます。CTやMR検査による血管撮影で、FMDの診断は可能です。診断を確定するために、カテーテル検査を行うこともあり、FMDの診断のみならず、血管の解離や合併する脳動脈瘤の有無もも確定できます。内頸動脈病変は、第一〜第二頸椎レベルでの頭蓋外が多く、頚部分岐部に起こる狭窄は、動脈硬化との関連が深いと考えられています。頭蓋内の動脈の狭窄の頻度は低く、稀に頚部病変が頭蓋内まで及んでしまうこともあります。
治療としましても、原因がはっきりしておらず、確立した治療もありません。無症状の患者さんに治療の適応はありません。脳虚血が起こる場合は、抗血小板薬の投与が行われ、動脈解離による脳虚血の場合は、抗凝血薬療法が適応となります。FMDの血管病変自体への外科的治療は確立しておらず、狭窄性病変に対して血管内治療(バルーンによる血管形成術やステント留置術)も治療として確立していませんが、選択される場合があります。