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薬物乱用頭痛という病名を聞いたことがありますか?(其の一)

Dr.丹羽の頭痛コラム

皆さんは薬物乱用頭痛という病名を聞いたことがありますか?
私ども頭痛専門医が最も治して差し上げなければならない頭痛の一つです。
国際頭痛分類3β版にも、薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)として定義づけられています。
薬物乱用頭痛と申しましても、元々は慢性の片頭痛や緊張型頭痛、聞きなれないかもしれませんが慢性の群発頭痛、新規発症持続性連日性頭痛という一次性頭痛(なんらか病気の部分症状としての頭痛ではなく、頭痛自体が病気)であった方が、鎮痛薬を使い過ぎてしまい、その鎮痛薬をさらに服用し続けることにより、かえって頭痛が起きてしまう、つまりは二次性頭痛になってしまった状態を指します。
頭痛が月に15日以上あり、3ヶ月を超えて定期的に頭痛薬(1ヶ月に10日以上もしくは15日以上)を服用していることを指しますが、ここでご注意を!
頭痛持ちではない方が一年365日毎日、腰痛などで鎮痛薬を服用しても薬剤乱用頭痛にはなりません。それなのに元々頭痛持ちの方では、生理痛であろうと、歯痛、腰痛、ましてや風邪の解熱剤(皆さんが通常服用される解熱剤は、医学的にNSAIDsと言われる消炎解熱鎮痛薬に入ります)として服用したとしても全て1日にカウントされ、1ヶ月に10日以上もしくは15日以上、鎮痛薬を服用すると容易に薬物乱用頭痛に陥ってしまいます。
1ヶ月に10日以上もしくは15日以上と2種類に分けている事にも意味があります。皆さんが通常意味するところの痛み止めには、いくつか種類があります。まずは私ども医師が処方する単純鎮痛薬(NSAIDs)で、ボルタレン、ロキソニン(今は薬局で買える様になりましたね)、ブルフェン、ナイキサン、インテパン、セレコックス、モービック、カロナール(これも薬局で買えます)など。頭痛を経験したことがある方ならば、一度は試したことがあるであろう市販薬(OTC製剤)のバファリンやイブ、ナロンエース、ノーシン、セデス、エキセドリンなどなど。そして、片頭痛の方が最も服用するであろうトリプタン系薬剤で、イミグラン、レルパックス、マクサルト、ゾーミッグ、アマージがあります。
最近ではほとんど使われなくなったエルゴタミン製剤であるジヒデルゴットとクリアミン。通常は使うことはないであろうオピオイド系薬剤(要するに麻薬系)であるモルヒネ、ソセゴン、トラムセット、トラマール、ノルスパンテープなど。
この中で医師が処方するNSAIDsのみ単純鎮痛薬という扱いで、月に14日まで服用しても平気ですが、他の痛み止めは全て、月に10日以上服用すると薬物乱用頭痛に陥ってしまいます。
市販薬(OTC製剤)は胃に優しくて早く効くので、たまに服用するには良い薬なのですが、いくつもの痛み止め成分が入っており複合鎮痛薬という扱いになり、月に10日以上服用し続けると、簡単に薬物乱用頭痛に陥ります。
頭痛持ちの方は、頭痛の時+風邪や生理痛などで月に10日位の市販薬は簡単に飲んでしまうでしょうから、薬物乱用頭痛に陥りやすいのです。
ただ、この状態を続けていると、頭痛薬が効かなくなるだけでなく、服用し続けた頭痛薬によって頭痛が起きてしまうだけでもなく、他にも困ったことが起きてしまいます。
次のコラムでは、薬物乱用頭痛になったらどうしたら良いの?と最近、イタリアの頭痛チームから報告された、ちょっと恐い事実も含めて、ご説明したいと思います。