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遺伝性出血性末梢血管拡張症(Osler-Weber-Rendu病)

Dr.丹羽の頭痛コラム

頭痛を起こす稀な脳神経疾患、その5です。
皮膚や鼻・口腔・消化管などの粘膜に多発する毛細血管拡張とそれに伴う出血、脳動静脈奇形や肺動静脈瘻を起こす常染色体優性遺伝性疾患です。8,000~10,000人に1人程度の割合で発症するといわれおり、男女差はありません。成人では90%以上の割合で繰り返す鼻出血を生じ、口、指、鼻などに毛細血管拡張、肺・脳・肝臓・消化管などに動静脈奇形を生じることがあり、本疾患の特徴となっています。遺伝形式は常染色体優性遺伝であり、50%の確率で親から子に遺伝します。約20〜40%に前兆のある片頭痛を伴います。
鼻出血(幼少期は鼻の中央の仕切りである鼻中隔の前の方にKiesselbach(キーゼルバッハと読みます)部位という毛細血管が集中しているところがあり、正常のお子さんでも鼻出血します)、鼻・指先・手・唇・口腔内などの皮膚粘膜の毛細血管拡張が、多くは40歳以前に出現します。点状、網状、クモの巣状などの形状をし、圧迫により赤色が消えることが特徴です。
脳内や脳の表面に血管奇形を生じることもあります。動静脈奇形、動静脈瘻、毛細血管奇形の3種類のタイプがあり、脳動静脈奇形、動静脈瘻は脳内出血、くも膜下出血といった重篤な頭蓋内出血を引き起こすことがあります。脳血管奇形の特徴はサイズが1cm以下の比較的小さいサイズの血管奇形が多いこと、しばしば多発性(2か所以上)であること、一般の動静脈奇形と比べて出血率が低めであることなどがいわれています。大きなサイズの脳動静脈奇形、動静脈瘻ではけいれんなどの症状を伴うことがありますが、通常は出血を起こさない限り無症状の ことが多く、診断にはMRIやMRアンギオグラフィーなどの画像検査が必要です。
脳の血管奇形のうち毛細血管奇形は血流の流れが遅く、一般的に大きな出血を生じにくいとされており、通常は治療せず、経過を見ることとなります。
一方、脳動静脈奇形や脳動静脈瘻は出血の可能性があり、いったん出血すると重度の後遺症を残す可能性があることから治療します。開頭手術、血管内治療、放射線治療の3つがあります。