2017/9/7~9/11までVancouverで国際頭痛学会が開催されました。
その中で小児片頭痛治療に関する興味深い報告がアメリカ・テキサス州にあるCook小児医療センターからありました。
日本では通常診療であまり使用されない塩酸ケタミンという麻酔薬があります。交感神経刺激促進を引き起こし、骨格筋弛緩作用がほとんどない(通常の麻酔薬は筋弛緩作用があり体が動かなくなります)非経口的に投与される手術中の麻酔薬で、副作用として唾液分泌、ときに著しい身体違和感が特に成人に起こることがある薬剤です。
片頭痛の急性期治療にはロキソニンやカロナールなどの鎮痛薬、トリプタン製剤などを使用しますが奏効しない場合が多々あります。塩酸ケタミンは麻酔薬ですがNMDA(グルタミン酸受容体の一種で、簡単に言えば脳梗塞など神経細胞死の際に深く関わる)拮抗薬でもあり、片頭痛発作時に脳内に出てくる悪玉の興奮性アミノ酸であるグルタミン酸をNMDA拮抗作用により軽減させる作用を併せ持っており、この作用が片頭痛特有の皮質拡散抑制(つまりは閃輝暗点という前兆)を減少させ、かつ前兆のない片頭痛も含めて発作を軽減すると考えられています。成人では経鼻的ケタミンの25mgで片頭痛発作が減ると報告されています。しかし、小児の片頭痛に対する効果や安全性は確立されていません。経鼻的ケタミンを0.1~0.2mg/Kgの頓服的投与で、15分おきに最高5回までの投与していました。
結果としましては、他の片頭痛治療(アセトアミノフェンやイブプロフェン、トリプタン系)が効く小児の片頭痛患者さんよりも、逆に反応しない小児の方がケタミンの効果はより明確に現れ、副作用も認めなかったのと事でした。
しかし、残念なことに18名の小児片頭痛患者さん、また、小児と言っても9~18歳の患者さんでしか検討をしておらず、より幅広い年齢の小児片頭痛の方を対象に、もう少し多い患者さんでの検討をする必要があると思います。