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CADASIL(脳皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳血管症)

Dr.丹羽の頭痛コラム

頭痛を起こす稀な脳神経疾患、その6です。
非常に長い疾患名のCADASILとは、常染色体優性遺伝で、若年期から前兆を伴う片頭痛が先行、CTやMRIで同定される大脳白質病変が徐々に進行、中年期から脳卒中危険因子がなくても皮質下白質にラクナ梗塞(小さな脳梗塞、無症状ならば隠れ脳梗塞というものです)を繰り返し発症し、うつ症状、脳血管性認知症に至ってしまうものです。NOTCH3遺伝子変異を認め、病理学的に脳の小血管平滑筋の変性と電子顕微鏡でオスミウムに濃染する顆粒(GOM)の蓄積を特徴とし、遺伝子診断又は病理診断で確定診断します。
やたら難しそうですが、初発症状が前兆を伴う片頭痛発作で20〜30歳頃に発症することが多いため、医師がCADASILを考えないとMRI上の変化も病初期は少ないため見過ごされてしまう疾患なのです。徐々に反復する脳卒中発作により、手足の麻痺や嚥下障害、歩行障害、尿失禁などを認めるようになります。それと共にうつ状態や無気力などの精神症状が進行し、階段状に認知症が悪化します。
従来の脳卒中の再発予防として用いられる抗血小板剤(血液をサラサラにする薬剤)の効果はなく、抗認知症効果を認める薬剤もないため、治療法はありません。そのため、残念ながら脳梗塞を繰り返すと60歳前後で寝たきりとなり、男性は65歳前後、女性70歳前後で死亡することが多い疾患なのです。