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MELAS(ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様エピソード)

Dr.丹羽の頭痛コラム


頭痛を起こす稀な脳神経疾患、その7です。
Mitochondrial myopathy encephalopathy lactic acidosis stroke-like episodes(MELAS)は、1984 年提唱された疾患で小児期に発症する多臓器疾患です。初期の認知機能は正常ですが、低身長が良く認められます。ミトコンドリアDNAの異常により母系遺伝により小児から成人に発症しますが、最多発症年齢は2~10歳です。初発症状は、てんかん、頭痛、嘔吐です。拍動性頭痛で連日続くことが多く、悪心・嘔吐を伴うことが多いと言われています。前兆のある片頭痛のように視覚前兆を伴いスマトリプタンの皮下注射が効果的な事もあります。その後、脳卒中様症状(てんかん発作、意識障害、視野狭窄、運動麻痺など)が出現します。その他、糖尿病、難聴、肥大型心筋症なども伴います。「脳卒中」に似た発作を繰り返しますが、脳梗塞と異なり片麻痺や構音障害で発症することは少ないのも特徴です。脳卒中様発作を繰り返し、青年期まで運動能力、視力、精神機能を損ないます。
MRI検査では後頭葉に多く、血管の支配域に一致しない病巣が MELASの特徴と言われています。これは脳血管の閉塞ではなく、脳のむくみ(脳浮腫)が脳卒中様発作の原因だからです。
根本的治療法はなく、各臓器症状に対する対症療法と、原因療法としてミトコンドリア内の代謝経路では各種のビタミンが補酵素として働いているので、その補充に水溶性ビタミン類(ナイアシンやビタミンB1、B2、C)やコエンザイムQ10(ノイキノン)を使用します。